投資

株式投資の仕組みを歴史から解説|株式投資はハイリスクなのか?

株式投資を始めたいけれど、「よくわからないので怖い」「仕組みがわからないものは信用できない」と考える人や、「株式投資はリスクが高くて危険」と思っている人もいるかもしれません。株式投資について知れば、こういった不安は軽減するでしょうし、リスクコントロールにも役立つはずです。株式投資の仕組みについてご紹介します。

株式の始まりは大航海時代

株式の仕組みは15世紀から17世紀の大航海時代における資金調達方法として始まりました。大航海時代の貿易スタイルは、船を出して国外の貴重な資源(コショウや塩)を持って帰港してくるもの。国内にない資源は莫大な利益を生んだそうです。冒険家が航海をするための船や物資を資産家が資金援助(投資)し、貿易が成功した暁には収益(収益リターン)の分配を受けるシステムが株式投資の原型となりました。

ただし当時の航海水準では、船を出しても無事に帰ってこられる保証はありません。物資を積んで無事に帰ってくれば大きな利益を得ることができる一方、遭難すればリターンはゼロ。つまり資産家にとって、ハイリスクハイリターンな投資だったのです。

そこで特定の投資家1人が出資するのではなく、複数の投資家が参加することで1人1人の出資額を抑える方法が編み出され、航海(貿易)によって利益が生じれば、出資した分だけのリターンが手に入る仕組みができました。これが株式投資に進化していくのです。

現代における株式投資

現代の株式投資でも、大航海時代と基本的な性質は同じです。冒険者が株式会社に、資産家(投資家)は株主となります。

● 冒険者=株式会社
● 資産家(投資家)=株主

株式をめぐる構図は大航海時代と変わりません。ですが「株式市場」ができ、安心して株を売買できる共通のルールが作られました。

株式投資の枠組みが決められ、株式会社は銀行に頼らずとも安定的に資金調達ができます。投資家である株主は株価下落によって損をするリスクを負いますが、株価と株数に応じた出資額を任意で決めることができます。

もともとは一部の資産家が出資するものでしたが、現代では広く一般の個人投資家が出資できる仕組みになっています。株主は会社のオーナーでもあり、株主総会での議決権を持ちますし、大口株主は経営に意見を出すこともできます。大口株主になれるのは資金力のあるごく一部の人だけとはいえ、誰でもお金を出せば株主になれるのは公平性の高い仕組みといえます。

制度が整う株式市場

株式市場で購入できる会社の株は、上場している会社の株だけです。上場とは、不特定多数の人が株や債権などを市場で取引可能にすることを意味します。日本では東京証券取引所が「東証一部」「東証二部」「マザーズ」などの市場を一般投資家に提供しています。

上場できる会社には株式数や純資産の基準があり決算や株価も公開されるので、個人投資家でも情報を元に投資ができます。ただし、「取引時間が決められている」「ストップ高・ストップ安による株価の制限を受ける」「販売時は所定の手数料が引かれる」などの制約も受けることになります。投資家にしてみれば手数料は痛手ではありますが、開かれたルールがあれば手数料を事前に把握することができるので問題ないはずです。

株式の購入方法と、それぞれの特徴

上場会社の株は証券会社の証券口座を通して売買します。購入価格は、「売りたい人」と「買いたい人」による需要と供給の関係により決定します。売買方法は指値(さしね)と成行(なりゆき)があります。この違いは重要なのでよく理解しておきましょう。

● 指値

株式の売買注文を出す際、値段を指定する注文方法。希望する価格で売買できる一方、価格のミスマッチが起こると売買が成立しない

● 成行

株式の売買注文を出す際、値段を指定せず注文する方法。指値注文に優先して売買が成立するが、想定以上に買値が高い、売値が低い、などの事態もありうる

購入単位は「単元株」と呼ばれます。単元は会社ごとに異なりますが、100株や1000株単位が一般的です。単元未満の株を購入する「単元未満株」もあります。購入単価が小さくなり、高値の株でも購入しやすいですが、単元未満株式だけを所有している株主には議決権が付与されないことを知っておきましょう。

とはいえ、単元未満株を買い増しし、単元株まで増やせば議決権を得ることは可能です。また、株式分割や会社の合併、減資、子会社化1単元の変更など、保有している単元株の様態が変わることにより単元未満株を取得することもあります。

なお、自己資金以上の取引ができる信用取引もありますが通常の株式投資は「現物取引」です。信用取引は自己資金以上の取引ができるため、少額で大きな利益を上げられる可能性があります。同時にリスクも大きくなりますので、仕組みをよく理解したうえで行わなければなりません。


お金についてはしっかり者 ナオコ
先生、株式の信用取引って何ですか?
資産運用アドバイザー モリウチ
現金や株式を保証金として証券会社に預けて保証金を担保にすることで、保証金の約3.3倍の取引が可能になることです。
お金についてはしっかり者 ナオコ
10万円預けると、33万円の売買ができるんですか?
資産運用アドバイザー モリウチ
簡単にいうとそういうことです。
お金についてはしっかり者 ナオコ
自己資金では手の届かない株も買うことができますね。
資産運用アドバイザー モリウチ
そこが最大のメリットです。自己資金が不足している人にはうれしいですが、投資額が大きければ損失時のマイナス幅も大きくなってしまいます。
お金についてはしっかり者 ナオコ
初心者向けではなさそうです。
資産運用アドバイザー モリウチ
そうですね。実際にやるとなったら、買っていないのに売る「空売り」や、最低保証金率による「追証(追加証拠金)」など、注意すべき点は多いです。
お金についてはしっかり者 ナオコ
(難しそう……)今は、信用取引というオプションもあることだけ覚えておきます!

株式投資で得られるものとリスク

株式投資で得られるメリット、逆に注意すべきリスクはどのようなものでしょう。順に解説します。

株式投資で得られる収益は3種類

株式投資で得られるものとしてまっさきに挙がるのが、「譲渡益」でしょう。買ったときよりも高値で売却した場合の差額が譲渡益です。「譲渡」とは無償で譲り渡すイメージがあるため、「売却益」といったほうがしっくりくるかもしれませんが、法律では株式の売却益を譲渡益と呼びます。

株を保有していれば手に入る可能性がある「株主優待」「配当金」も株式投資で得られるものです。

【 株主優待とは 】

株主優待は、会社から株主へのギフトと考えるといいでしょう。自社で使用できるクーポン券や自社製品などが贈呈されます。株主への感謝の印でもあり、株に付加価値をつけることで株を長期保有してもらう、もしくは株を購入したいと思わせる効果を狙うものです。より多くの株を、より長く保有している株主が優遇される傾向にあります。

【 配当金とは 】

会社に利益が出たとき、その利益を株主に還元することです。通常は決算時に配当が行われ、決算内容に応じて配当の額が変化します。配当が増えれば「増配」、減れば「減配」、そして配当がないと「無配」となります。配当の有無や金額は、株式の人気を左右することもあります。

譲渡益をキャピタルゲイン、株主優待や配当金などの消極的利益をインカムゲインといいます。積極的に売買を繰り返し、収益を上げたい人はキャピタルゲインを、活発な売買を好まない人はインカムゲインを狙うのが適しています。ただし、インカムゲインは業績や会社の方針により内容が決定されることを理解しておきましょう。

株式投資にはこんなメリットも

証券会社の口座開設には制限がなく、低予算で購入できる銘柄も少なくありません。その点では、投資を始めやすいでしょう。損失が怖い人は投資金額を抑えることでリスクコントロールができます。具体的には少額銘柄を選定したり、単元未満株を購入したりする方法です。また、応援したい企業の株主になれるのもうれしいポイントではないでしょうか。

株式投資のリスク

株式投資において一番のリスクといえば株価の「下落リスク」でしょう。製造会社におけるリコールや、幹部社員の不祥事、業績の下方修正など、該当企業のネガティブな材料がニュースになれば株価が大きく値下がることがあります。

値が下がったとしても、マイナス材料が一時的なものであれば値が戻ることが期待できるでしょう。しかし下落したまま値が戻らないと損益が出るのを覚悟で損切りすることになります。損切りのタイミングを逃すと売るに売れない「塩漬け株」になってしまうかもしれません。可能性としてはかなり低いですが、上場廃止になる場合もあります。


お金についてはしっかり者 ナオコ
当たり前ですが、株にはリスクもあるんですね。株価が下がったときにはどうするのがベストなのでしょう。
資産運用アドバイザー モリウチ
下落の要因が特定の「ネガティブニュース」であれば、そのニュースに対する企業の対応を見るのがいいでしょう。
お金についてはしっかり者 ナオコ
というと?
資産運用アドバイザー モリウチ
例えばA社の幹部が新入社員へのセクハラで逮捕されたとします。その時A社が即座に幹部を解任したうえで、セクハラ防止の社員教育を徹底して行ったとします。
お金についてはしっかり者 ナオコ
悪いニュースではありますが、A社の対応としては悪くないと思います。
資産運用アドバイザー モリウチ
しかしその後A社は、長年セクハラが横行していることが判明。A社の社員教育も「形だけ」と批判の的になってしまいました。
お金についてはしっかり者 ナオコ
えー!
資産運用アドバイザー モリウチ
ちょっと意地悪な例でしたね。ここで言いたかったのは、ナオコさん個人の感想ではなく、世間の受け止め方をチェックすることが重要だということです。
お金についてはしっかり者 ナオコ
A社が何かしらの対応をするのは当然のこととして、その対応が世間にどう評価されるのかを見るんですね。
資産運用アドバイザー モリウチ
難しいですが、そういうことです。ナオコさん自身がA社の対応について判断することも大切ですが、株価を決定するのは世間や市場の反応ですから。
お金についてはしっかり者 ナオコ
はい!
資産運用アドバイザー モリウチ
マイナス材料が出たときに、その影響が一時的なものなのか、長期化するのか見極める習慣をつけておきたいです。それが上場廃止も含めた株価下落リスクを減らすことにつながります。

売買がコントロールできないデメリット

株式投資は売りたい人と買いたい人の双方がいて成立する投資方法です。そのため、株価下落のリスクとは別に、需要と供給のバランスが整わない場合のデメリットもあります。そのような時は「売りたい値段で売却できない」「売りたいときに売却できない」といったことが起こりえます。

その意味では換金性の低い金融資産といえます。急な出費で「週末までに〇〇万円必要」ということもあるでしょう。そんなとき株式の売り注文を出し、「指値で売りを出したら売買が成立しなかった」「成り行きで売りを出したら売却高が必要な資金に足りなかった」……といったことが考えられます。緊急資金の準備時には利用しにくいことを理解したうえで投資しましょう。

株式投資と税金

株式投資の収益は課税されます。収益の多寡や扶養家族の数などに関係なく一律である点が株式投資の特徴といえます。税率は20.315%(復興特別税を含む)となっており、譲渡益・配当益どちらも課税対象です。譲渡益でいうなら、10万円で購入した株が20万円で売れれば、差額の10万円が課税されます。

納税があると聞くと「株式投資って面倒」との声が聞こえてきそうですが、そういった人は口座開設時に「特定口座」を選択しましょう。特定口座なら証券会社が1年間の収益(または損失)を計算し、年間の取引報告書を作成してくれます。さらに「源泉徴収あり」を選択すれば、納税も証券会社が行ってくれます。同じ特定口座でも「源泉徴収なし」を選択すると、取引報告書を参考に、納税を自分ですることになります。

株式投資はリスクもあるが仕組みを知れば、怖くない

株式投資は、投資家と企業双方にとってメリットのある仕組みです。長い時間をかけて市場が整備され、多くの人が参加する投資手段となりました。株価下落のリスクは確かにあります。しかし下落時にも「損切り」「値が戻るまで長期保有」などの判断が適切にできれば、リスクを抑えることが可能です。また、不安に応じて投資額の調整も自在です。興味があるが不安も大きいという人は、株式投資について勉強しながらまずは少額銘柄で始めてみてはいかがでしょうか。